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研究紹介

 1960年に最初のレーザーの発振が報告されて以来、60年以上が経ちました。われわれの日常生活においてもたくさんのレーザーが使われていますが、新しいレーザーの開発とそれらの応用技術の進展には、大きな期待が寄せられています。
 レーザー光の発振は可視域や赤外域にとどまらず、X線からマイクロ波を超える波長領域まで拡張され、パルス幅もアト秒(as)領域まで到達しました。その結果、ピーク出力がペタワット(PW)のレーザーも実現しています。
 私たちは、実験室レベルで利用可能な先端レーザー技術を駆使して、新しい材料プロセス開発や新物質創製の研究を進めています。また、強度、位相、偏光を制御した新しい光ビームであるベクトルビームの開発とその応用研究にも取組んでいます。さらには、光を使って電子を操作する技術の開発にも挑戦しています。  

    ベクトルビームの光科学

ベクトルビームとは
 
 ビーム断面において、偏光分布が不均一である光ビームはベクトルビームと呼ばれている。

 ベクトルビームの一種である径偏光(radial polarization)ビームの焦点付近では、光軸に平行な電場(縦電場)が顕著に現れる。垂直な電場(横電場)が顕著である平面波の集光とは極めて対照的である。また、この偏光成分は完全に円筒対称で最も小さな集光スポットを形成する。

ベクトルビームの発生(共振器からの直接発生)方法の開発
 
 偏光変換素子を使ってガウスビーム等からベクトルビームへ変換することも可能であるが、レーザー共振器から直接発生したベクトルビームビームは、より理想的なベクトルビームに近い。光学材料の複屈折などを利用すると、一般的なレーザー共振器からでもベクトルビームの発生が観測できる。

ダークスポット形成

 光軸上の光強度が完全にゼロとなる光スポット(ダークスポット)が存在する。ベクトルビームで形成されるダークスポットは、強度分布が完全に円筒対称である上に、より小さなスポットとなる。

ベクトルビームの応用
 ベクトルビームの応用技術として、粒子加速、レーザー加工や超解像顕微鏡などが期待されている。われわれは、ベクトルビームの微小スポット形成能を利用した超解像顕微鏡への応用研究を進め、一般的な走査型レーザー顕微鏡の光源をベクトルビームに置き換えるだけで100 nm程度の空間分解能が得られる、超解像顕微鏡を提案している(10.1016/bs.po.2021.01.001)。特に、ベクトルビームのスーパーオシレーション特性を利用した超解像顕微鏡は光の回折限界を遥かに凌駕する分解能が期待できる。
 また、ベクトルビームの特殊な偏光特性を生かしたレーザー加工法の開発(10.1364/OL.405852)にも取り組んでいる。
   
    高強度レーザー光を利用した新しい材料プロセスの開発(準安定状態ナノ粒子、機械的原子間結合)

高強度レーザー場と物質
 
 フェムト秒レーザーパルスを集光すると、1013W/cm2を超える強い光の場を形成することができる。この強い電場は、多光子吸収、なだれイオン化やトンネルイオン化を引き起こし、レーザー照射された物質は短時間で高温高密度プラズマを形成する。1017W/cm2程度の光強度は水素原子内のクーロン電場に匹敵する。このような場は、一般的な材料プロセスでは実現できないため、新しい材料プロセスとしても期待される。われわれは、準安定状態の合金ナノ粒子の作製や、レーザー衝撃波による機械的原子間結合による分子合成を行っている。

固溶合金ナノ粒子の作製(
Au-Pt-Rh-Pd-Ir系ハイエントロピー合金ナノ粒子)

 塩化金酸や塩化白金酸の水溶液にフェムト秒レーザー光を集光すると、水分子の光分解によって発生する水和電子や水素ラジカルが還元剤となって金イオンや白金イオンが還元され、ナノ粒子が生成する。金-白金系合金はバルクでは相分離するのに対して、これらを混合した水溶液にレーザー照射して合成した両者の合金ナノ粒子は、固溶状態となる(10.14356/kona.2022002)。この準安定状態のナノ粒子は、ハイエントロピー合金である5元系(Au-Pt-Rh-Pd-Ir)でも固溶状態を維持することが確認されており、燃料電池等の触媒としての応用が期待される。

高強度レーザー場による物質の構造相転移と有機分子の合成
 高強度レーザー場では、物質中で急激にプラズマが膨張し、強い衝撃波が発生し、その圧力は1 T Pa(107 気圧)にも達すると予測されている。この圧力は衝撃波の伝搬方向にのみ発生することから、物質を1方向に圧縮する効果を持ち、物質の構造を変えたり、分子間に新しい結合を生成(10.1002/cphc.202000563)することが期待される。
 われわれは、炭素系粒子の構造相転移や炭化水素系分子間の機械的結合による合成プロセスの開発を進めている。
   
    光による電子ビーム制御法の開発

光波から電子波への波面転写

 
 光で電子を制御する基盤技術の開発を進めている。第一段階として、物質を仲介した(光ー物質ー電子)波面制御技術の開発を進めている。上図では、光の平面波と光渦の干渉縞で薄膜を加工して、ホログラム回折格子を作製し、それに電子の平面波を照射すると等位相面が渦状となっている電子波が回折光として得られる。
 この加工プロセスでは、厚さが10 nmで支持基板のない薄膜を1ショットで加工できる(10.1364/OE.400941)ことを確認している。集束イオンビーム(FIB)と比較しても、高速、低コストで、より薄い膜の加工が可能である。光は原子と比較して、運動量が極めて小さいため、材料自体への加工損傷が低減できると推測される。