monochromatic atomic beam

isotope separation

thin film deposition of TiO2

thin film deposition of BN

nano-particle

radially polarized beam (experiment)

radially polarized beam (calculation)

 

径偏光レーザービームの発生

偏光分布が空間的に不均一であるビームのうち、光軸に対して対称な分布を持つビームを、軸対称偏光ビームあるいは、円筒対称偏光ビームと呼ばれている。このうち、直線偏光が放射状に分布しているビーム(図1(a))はラジアル偏光あるいは径偏光と呼ばれ、方位角方向に分布したビーム(図1(b))はアジマス偏光あるいは方位偏光と呼ばれている。以下では、その発生方法についてわれわれの研究成果を示す。

 

  1. 円錐ブリュースタープリズム1

径方向に偏光したレーザービームの持つ特異な集光特性が近年注目されており,様々な発生法方が提案されている.これまで,我々のグループでは円筒対称な円錐状ブリュースタープリズムの偏光選択性に着目し,Nd:YAGレーザー共振器からの直接発生に成功している.さらに、ブリュースタープリズムに改良を加え,安定性を向上させるとともに高次のモードでの径偏光ビームの発振も得られている. 偏光選択素子として,ブリュースター条件を満足する角度を持つ円錐状プリズム(アキシコン)に誘電体多層膜を蒸着し,ビーム発散補償のための凹型の素子に屈折率液を満たして張り合わせた素子を作製して用いている.これを半導体レーザー励起によるNd:YAGレーザー共振器中に挿入し,径方向偏光レーザービームの共振器からの直接発生を行っている.また,共振器中に可変開口を挿入することで,発振モードの選択を行っている.

 

2. レーザー媒質の複屈折性3-6,12,15

レーザー媒質自体の複屈折性を利用して径偏光レーザービームを得ることに成功した3-5。この方法では、共振器構成が極めて簡単であるがゆえに、高い安定性を有する。Nd:YVO4レーザーでは通常a-cut結晶が用いられるが、敢えてc-cut結晶を用いることにより、径偏光レーザービームを極めて容易に得ることができた (図3参照)。

同様の手法はレーザー媒質が等方性の場合にも適用することができる。この場合は、c-cut複屈折性物質を共振器内に挿入することによって容易に実現できる6,12(図4参照)。

  

さらに、励起光を吸収することによってNd:YAGロッドに発生する熱分布に起因する熱複屈折と熱レンズ効果を組み合わせると、同様の原理で径偏光と方位偏光ビームを選択的に発振させることができる。共振器の安定性ダイヤグラムに基づいて偏光が選択されることや、大きな出力を得るための最適な共振器構成を、容易に得ることができる。また、偏光選択素子などが不必要であり、極めて簡単にベクトルビームを得ることができる15。マルチモードで100Wの出力が得られるレーザーモジュールを用いた場合、単一横モード発振で約40Wの出力と高いビーム品質が得られている。

         

3. 光ファイバーのモード選択7と径偏光ビーム増幅14

図4に示すように、径および方位偏光モードが光ファイバー中を伝播するLP11モードに含まれていること、および光ファイバーに応力を加えることによりモードを選択できることを利用して、波長可変・狭線幅な軸対称偏光(径および方位偏光 ) レーザーの発生を行った7。本実験では、最初に外部共振器型半導体レーザーの共振器内に位相調整板を挿入して、波長可変・狭線幅なTEM01モードビームを発生させ、これを2モード光ファイバー中を伝播させて 任意のモードを選択している。この他、径偏光やハイブリッドモードビームも得られている。外部共振器型半導体レーザーにおけるTEM01モードビームの発生、および波長可変な軸対称偏光レーザービームの発生はこれまでに報告がなく、本研究が初めてであると考えている。 このようなビームは光軸上で強度が完全にゼロとなるため、原子レンズとしての応用が期待される。

また、ガウスビームの増幅に用いられているYbドープダブルクラッド光ファイバーを用いた径偏光ビームの増幅も行なっている14。径偏光ビームが、偏光および強度の分布を保ったままをYbドープ光ファイバー内を伝播することを確認し、これをもとに半導体レーザーで励起し増幅を行なった。約100mWの入射光強度に対して、ほとんどASEの影響を受けずに1W程度の出力が得られた。

 

4. 偏光選択性フォトニック結晶ミラー8,13

フォトニック結晶は複屈折性を持つことができるため、偏光素子として利用されている。われわれはミラーとしても使用できることに注目し、同心円状のパターンを持った偏光選択性フォトニック結晶ミラーを用いた軸対称偏光(径および方位偏光)レーザービームの発振に成功した8。この方法は、通常のレーザー共振器ミラーの一枚と取り替えるだけで、極めて容易に軸対称偏光ビームを得ることができる。出力やビーム形状などにほとんど影響を与えないことも判明している。

また、偏光に対する反射率の異なる輪帯を加えたフォトニック結晶ミラーを用いることにより、下図に示すように、二重リング径偏光ビーム(TM02モード)を、単一で安定に発振できることを示した13。原理的には、より高次の横モードビームの発振も可能と考えられる。

 

5. 分割波長板を用いたヘリカルビーム発生9

分割した1/2波長板を用いると、直線偏光ビームを擬似的に径偏光あるいは方位偏光ビームに変換できる。これをレーザー共振器内に挿入しても、光の一往復で偏光は元の状態に戻るため、レーザー発振が可能であると考えられる。われわれはフォトニック結晶で作製された分割波長板をTi:sapphireレーザー共振器内に挿入して、ヘリカルビームがひとつの共振器内に共存する状態を実現した。これは、光ビームの軌道角運動量が保存されることを示しているいる。また、軌道角運動量を持った径偏光ビームが伝播とともに、その軌道角運動量がほぼスピン角運動量に変換されることも実験的に示した。

 

6. 第二高調波による軸方向電場の観測10,17

径偏光ビームを強く集光すると、焦点付近に強い軸方向電場(axial or longitudinal electric field)が発生することが知られており、径偏光ビームの応用上最も優れた特徴のひとつとして注目されている。この電場は磁場を伴わないことから、伝播せず焦点付近に局在する。この電場を検出するために、第2高調波発生を利用した方法を考案し、実験を行った。様々な円筒対称偏光レーザービームを(110)ZnSe単結晶に集光し、発生した第2高調波の強度パターンを遠視野で観測した8。その結果、径偏光ビームによって軸方向電場が発生していることが示された10。この方法は、電波を乱すことなく、実時間でかつ遠視野で軸方向電場を検出できると言う特徴を有している。 さらに、これらの第二高調波パターンの計算を行い、先に行った定性的な考察とよく一致する結果が得られた17

 

7. 円環状径偏光ビームの発生16

円環状の径偏光ビームは従来のビームよりも小さなスポット径を実現できることが期待されている。もっとも簡単な方法は、径偏光ビームの中心部分をマスクで遮断することである。我々は、第二高調波発生過程を用いて、円環状の径偏光ビームを発生した。非線形光学結晶を用いる第二高調波発生においては、角度位相整合を満たすことが重要であり、そのためある角度でのみ第二高調波が発生する。c軸カットの非線形光学結晶に常光線あるいは異常光線だけからなる光を入力すると、第二高調波は異常光線あるいは常光線となる。正の複屈折性を持つ非線形結晶の場合は、異常光線、すなわち径偏光ビームとなる。

参考文献

1) Y. Kozawa and S. Sato, Generation of a radially polarized laser beam by use of a conical Brewster prism, Optics Letters 30, 3063 (2005). link

This research was introduced in Photonics Spectra, December 2005. (http://www.photonics.com/spectra/research/XQ/ASP/preaid.272/placement.HomeIndex/QX/read.htm)

2) Y. Kozawa and S. Sato, Focusing property of a double-ring-shaped radially polarized beam, Optics Letters 31, 820 (2006). link

3) K. Yonezawa, Y. Kozawa and S. Sato, Generation of a radially polarized laser beam by use of the birefringence of a c-cut Nd:YVO4 crystal, Optics Letters 31, 2151 (2006). link

4) Y. Yonezawa, Y. Kozawa and S. Sato,  A compact laser with radial polarization by using a birefringent laser medium, Jpn. J. Appl. Phys.. 46, 5160 (2007). link

5) Y. Yonezawa, Y. Kozawa and S. Sato, Focusing of radially and azimuthally polarized beams through a uniaxial crystal, Journal of Optical Society of America A 25, 469 (2008). link

6) Y. Kozawa, K. Yonezawa and S. Sato, Radially polarized laser beam from a Nd:YAG laser cavity with a c-cut YVO4 crystal, Appl. Phys. B 88, 43 (2007). link

7) T. Hirayama, Y. Kozawa, T. Nakamura and S. Sato, Generation of a cylindrically symmetric, polarized laser beam with narrow linewidth and fine tunability, Optics Express 14, 12839 (2006). link

8) Y. Kozawa, S. Sato, T. Sato, Y. Inoue, Y. Ohtera and S. Kawakami, Cylindrical vector laser beam generated by the use of a photonic crystal mirror, Appl. Phys. Express 1,  022008 (2008). link

9) H. Kawauchi, Y. Kozawa, S. Sato, T. Sato and S. Kawakami, Simultaneous generation of helical beams with linear and radial polarization by use of a segmented half-wave plate, Optics Letters 33, 399 (2008). link

10) Y. Kozawa and S. Sato, Observation of longitudinal field of focused laser beam by second harmonic generation, Journal of Optical Society of America B 25, 175 (2008). link

11) 小澤、佐藤、軸対称偏光ビームの発生法と集光特性、光学, 35 (2006), 625-634 解説記事

12) H. Kawauchi, Y. Kozawa and S. Sato, Generation of radially polarized Ti:sapphire laser beam using a c-cut crystal, Optics Letters 33, 1984 (2008). link

13) Y. Kozawa and S. Sato, Single higher-order transverse mode operation of a radially polarized Nd:YAG laser using an annularly reflectivity-modulated photonic crystal coupler, Optics Letters 33, 2278 (2008). link

14) T. Chubachi, Y. Kozawa and S. Sato, Amplification of a radially polarized laser beam using an Yb-doped double-clad fiber,” Optics Letters 34, 716 (2009).  link

15) A. Ito, Y. Kozawa and S. Sato, Selective oscillation of radially and azimuthally polarized laser beam induced by thermal birefringence and lensing, Journal of Optical Society of America B 26, 708 (2009). link

16) S. Sato and Y. Kozawa, Radially polarized annular beam generated through a second-harmonic-generation process, Optics Letters 34, 3166 (2009). link

17) A. Ohtsu, Y. Kozawa and S. Sato, Calculation of second-harmonic wave pattern generated by focused cylindrical vector beams, Appl. Phys. B 98, 851 (2010). link

18) Y. Kozawa and S. Sato, Optical trapping of micrometer-sized dielectric particles by cylindrical vector beams, Optics Express, 18 10828 (2010). link

19) Y. Kozawa and S. Sato, Demonstration and selection of a single-transverse higher-order-mode beam with radial polarization, Journal of Optical Society of America A, 27, 399 (2010). link

20) A. Ito, Y. Kozawa, S. Sato, Generation of hollow scalar and vector beams using a spot-defect mirror, Journal of Optical Society of America A, 27, 2072 (2010). link

21) K. Kano, Y. Kozawa, S. Sato, Generation of a Purely Single TransverseMode Vortex Beam from a He-Ne Laser Cavity with a Spot-Defect Mirror, International Journal of Optics, 2012, 359141 (2012). link

22) Y. Kozawa, T. Hibi, A. Sato, H. Horanai, M. Kurihara, N. Hashimoto, H. Yokoyama, T. Nemoto, S. Sato, Lateral resolution enhancement of laser scanning microscopy by a higher-order radially polarized mode beam, Optics Express, 19(17), 15947 (2011) link

23) K. Shimohira, Y. Kozawa, S. Sato, Transverse mode control by manipulating gain distribution in a Yb:YAG ceramic thin disk, Optics Letters, 36(21), 4137 (2011) link

24) R. Takeuchi, Y. kozawa, and S. Sato, Polarization coupling of vector Bessel-Gaussian beams, J. Opt., 15(7), 075710 (2013), linkselected as a "Highlights of 2013"

25) S. Ipponjima, T. Hibi, Y. kozawa, H. Horanai, H. Yokoyama, S. Sato, T. Nemoto, Improvement of lateral resolution and extension of depth of field in two-photon microscopy by a higher-order radially polarized beam, Microscopy, 63(1) 23 (2014) link

26) S. Vyas, Y. Kozawa, S. Sato, Generation of radially polarized Bessel-Gaussian beams from c-cut Nd:YVO4 laser, Opt. Lett., 39(4), 1101 (2014) link

27) S. Vyas, Y. Kozawa, S. Sato, Generation of a vector doughnut beam from internal mirror He-Ne laser, Opt. Lett., 39(7), 2080 (2014) link

28) S. Kanazawa, Y. Kozawa, S. Sato, High power and highly efficient amplification of radially polarized beam using Yb doped double-clad fiber, Opt. Lett., 39(10), 2857 (2014) link

29) S. Segawa, Y. Kozawa, S. Sato, Demonstration of subtraction imaging in confocal microscopy with vector beams, Opt. Lett., 39(15), 4529 (2014) link